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松井クリニック

お知らせ

スギ花粉症の根治も可能な舌下免疫療法とは

2015年6月15日

スギ花粉症に悩む人は国内でなんと2500万人ともいわれています。そんなスギ花粉症の新しい治療法として、昨年10月より保険適用されたのが舌下免疫療法。ごく少量のアレルギー物質を毎日摂取することで症状が軽減、根治の可能性も出てきました。

花粉症大国日本を悩ませる 発症のメカニズムとは

 花粉症の患者さんは年々増え続けています。中でもスギ花粉症は花粉症全体のおよそ70%を占め、日本人の国民病ともいわれています。
 花粉症は、スギやヒノキなどの花粉が原因でくしゃみや鼻水などの症状を引き起こすアレルギー疾患の一つです。私たちの身体には病原菌などの異物が体内へ侵入するのを防ぐ免疫作用が備わっていますが、花粉症の方の場合は、花粉という異物に対して体内でIgE抗体という物質が作られます。その抗体が一定量まで蓄積されると、花粉に反応してヒスタミンなどの化学物質が分泌され、それがくしゃみや鼻づまり、目のかゆみなどの症状を引き起こすのです。
 治療は、免疫療法と、内服・点眼・点鼻薬やレーザー治療などの対症療法があります。従来の免疫療法はアレルゲンを少量ずつ注射する方法ですが、開始当初は毎週通院が必要なことや注射の痛みなど、患者さんにも負担がかかってしまいます。

根治も期待できる スギ花粉症の舌下免疫療法

 スギ花粉症に対し注射と同様にアレルゲンを体内に摂取する治療法として、昨年から保険適用になったのが舌下免疫療法です。これは1日1回、スギ花粉を含む液体の治療薬を口から摂取する方法で、初回の投与は医療機関で行いますが、それ以降は原則自宅で行っていただきます。薬に含むアレルゲンは、治療開始から2週間は徐々に量を増やす増量期、その後は一定量の維持期となります。

 舌下免疫療法のメリットとしては、注射の痛みがなく、また通院の頻度が軽減されること。そして、注射に比べてアナフィキラシーショックなどの重篤な副作用が少ないことが挙げられます。私は保険適用前から舌下免疫療法を実施していますが、これまで重篤な副作用が起こったケースはありません。また抗アレルギー薬などの対症療法とは異なり、体内のIgE抗体をブロックする抗体を増やすなどのメカニズムで、スギ花粉症の根治を目指すことができます。

治療スタートは11月前から 最低でも3年の継続が必要

 舌下免疫療法は花粉シーズンが始まる3ヶ月以前から開始するのが望ましいため、11月前までには治療をスタートさせる必要があります。また効果を持続させるためは、花粉シーズン以外の時期でも毎日治療薬を服用し、3年から5年程度は継続する必要があります。症状が改善したからといって中断してしまうと、また始めから治療のやり直しになってしまいます。
 投薬は自宅で行うことができますが、舌下免疫療法の治療薬は新薬なので今年の10月までは月2回の通院が必要です。ただし、10月以降は月1回の通院で済むようになります。

スギ花粉症の診断が必要 治療が適さない場合も

 現在、舌下免疫療法を行うことができるのはスギ花粉症だけで、治療の前には医師の診断が必要です。また、舌下免疫療法には重篤な副作用も少なく死亡例の報告もありませんが、使用方法を誤ると発生しないとも限りません。必ず医師の管理の上で、適切に服用するようにしてください。なお薬の添加物などが原因で、服用時にピリピリ感を感じることがあります。治療開始から2週間程度は体調の変化に気をつけ、副作用があらわれていないかを注意深く観察した方がよいでしょう。
 対象となるのは原則として12歳以上。治療開始時に妊娠している方や、喘息などに疾患によっては治療が受けられない場合もあります。また人によっては効果があらわれないケースもあるため、治療開始前には免疫療法の特徴を十分に理解する必要があります。
 舌下免疫療法を行うことができるのは、花粉症について十分な専門知識を持ち、定められた講習会などを受講した医師に限られています。体質やライフスタイルによっても適した治療法は異なりますので、まずは専門の医療機関を受診してください。

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